5kappafamily’s blog

知人と一緒に童話を作成しています。これから挿絵を入れて絵本にしたいと思います。

新作:かっぱとさわがに


 

さるかに合戦って昔話 知ってるかい?

 

僕らがここに住み着くずっと前から この地を守ってくれていた

げんごろう川となみだ川の交わる泉ヶ淵に奉られている

「蔵っこさま」が 子がっぱのみぃちゃんに聞きました

 

知ってるよと みぃちゃんが言いました

 

さるに痛めつけられたかにに代わって

石臼と蜂と栗と共に 猿をこらしめるお話しだけど

これには 続きがあるんだよと お話をしてくれました

 

蜂が刺し 栗が囲炉裏から飛び出して火傷を負わせ

石臼は屋根裏の梁から飛び降りて 猿を押さえつけるはずだったが

勢いあまって 石臼は 押しつぶして猿を死なせてしまった

 

蜂は猿を刺した事ですぐに死んでしまい

栗は大火傷をおって 大急ぎで地中にもぐったが 芽を出す事はなかった

その時 既に付喪神になっていた石臼だけが残った

 

あれから100年 200年と 猿を死なせてしまったその事が

頭から離れず その過ちにさいなまれ涙しつづけ

いつの頃からか 石臼は泣き臼と呼ばれるようになっていた

 

 

亡くなった猿の話は 遠くの山々に住む猿仲間にも伝わった

猿達は付喪神になっている石臼に恐れをなしてか

あれから一切関わりあう事はなかった

 

しかし 蜂や栗に対してはそうではない

1年のうち わずかの期間に一生懸命採めた あまい蜜を横取りしたり

多くのとげで守られている栗を 起用にもほじくり返したり

蜂や栗に対して容赦なく いっこうに改心する事はない

(かっぱも猿達とは あまり仲が良いほうではなかった)

 

子がっぱのみぃちゃんは 「蔵っこさま」に

なんでそんなに昔の事をいろいろ知っているの?

いつからここにいるの? と聞いてみた

 

「蔵っこさま」は ある修行僧の手によって彫られた地蔵であり

道行く人々の安全を願って ここに この木の下に奉られたそうだ

 

来る日も 来る日も ここで色々な話を聞いてきた

900年 いや1000年 くらいは経ったのかな?

 

 

小さな国の近くにも さわがに達はいる

流れる川や沢にたくさんいたが ちょっと動く影にもおびえ

岩と岩の隙間にもぐりこんで隠れてしまう

近くに隠れる場所がないと 大きなハサミを高々とふりかざして

真っ赤になって威嚇するので

小さな国の住民達も あえて関わろうとしなかった

 

そんな さわがに達を不思議がって見ていた みぃちゃん

その中でもひときわ大きなさわがにに 聞いてみた 

 

さわがにの名はタク 左右のハサミの大きさが違っていて

自分の体とほぼ同じ大きさの右腕のハサミが

やけに重そうに感じられ やや右側に傾いているようだった

 

タク達は 何でいつも おこってるの?

悪気もなく堂々と聞くもんだから 屈託がない

 

 

タクは 子供の頃から聞かされている歌を みぃちゃんに聞かせました

 

ちょき ちょき ちょっきん がっしゃ がしゃ

猿どんと おにぎりを交換した ♪

 

ちょき ちょき ちょっきん がっしゃ がしゃ

かわりに柿の 種ひとつ ♪

 

はやく実がなれ 柿の木よ

どんどん大きくなれ みんなでおいしく食べよう ♪

 

猿どんと 一緒に食べよ あまい あまーい柿 食べよ ♪

 

ちょき ちょき ちょっきん がっしゃ がしゃ

猿どん あまーい柿を とっとくれ ♪

これはおいらのあまい柿 あおい柿でも食べてくれ ♪

 

ちょき ちょき ちょっきん がっしゃ がしゃ

それなら おにぎり返しておくれ ♪

 

ごめんね カニどん おにぎりは 返したくても 腹の中 ♪

 

 

みぃちゃんが知っているさるかに合戦の話と 同じ内容だった

 

彼らは またおにぎりをだまし取られるのでは?と

神経をとがらせて ハサミを高々とふりかざして

今でも そのような強迫観念に駆られて 

ほかとは関わろうともせず

真っ赤になって 威嚇する

 

タク達が おこっているのは 本能でそうしているらしい

 

みぃちゃんは その話をかっぱの長老達に話をしました

その話は 今まで関りをもたなかった山の動物達にも伝わって

小さな国の住民達は ある計画をたてました

 

 

小さな国の中心にあるしらかばの木の下で

毎月行なわれる大鍋の日があります

 

その日に 小さな国の住民達はみんなで

大鍋で餅米を蒸して かっぱの大好物のお餅をつくりました

それは みんなでお腹いっぱい食べても

食べきれないほどの 数でした

そして タクの仲間達みんなを招待したのです

 

彼らの両方のハサミに お餅をひとつずつもたせました

100匹 200匹 300匹 400匹 500匹 

続々と岩の陰から お餅を求めて出てきます

それでも まだお餅は無くなりません

 

小さな国には 猿達はいないので 安心して下さい

とかっぱの長老達は タクに言いました

そして秋には柿もいっぱい取れるから

また来てくださいねと つけ加えた

 

 

しらかばの木の下で ひと仕事を終えた

石臼さんが 休んでいました

 

そう言えば みんなでお餅をつくときに

泣き臼さんの出番だよ 呼んでいましたが

あの昔話の石臼さんだったと みぃちゃんは気づきました

 

でも 今ではニコニコと笑顔だったので 安心しました

 

タク達さわがには 小さな国の住人達や山のみんなと

少しづつ打ち解けて 今では 共同の洞窟温泉に浸かりに来るほどです

岩風呂に浸かっては 茹であがる前に出てと大忙しです

 

めでたし めでたし ♪

 

おわり