5kappafamily’s blog

知人と一緒に童話を作成しています。これから挿絵を入れて絵本にしたいと思います。

サイドストーリー:第9作:ぶっちーとなでぽぽ  ---勇気をもって---

まっさおな大空と雄大な山々・緑あふれる森がすべて見渡せる水辺。
山々から流れ落ちてくる清流が水しぶきでキラキラと輝きます。
その水辺にはたくさんの水草が茂り、青々しい夏の香り
水草にまじって、愛らしいなでしこやタンポポたちも元気よく空をあおぎ、
咲き乱れています。
その水辺は山や川や森に住むみんなの楽園。

そこへ、奥の方の森からミツバチの大群が蜜集めにやってきました。
どうやら、とろーりあまあまのなでしこやタンポポの蜜が目当てのようです。
そのミツバチの大群にずいぶんと遅れをとった1匹のミツバチ。
名前はぶっちー。何をしても不器用でみんなに遅れをとってしまいます。
だけど、ぶっちーは何にでも一生懸命、いつも自分より誰かを
思いやる優しいミツバチです。

ぶっちーが仲間たちにだいぶ遅れて、
ようやくなでしこやタンポポが咲く水辺に到着。
でも、蜜集めをするためにぶっちーがとまれる
なでしこやタンポポは見当たりません。
既に仲間がとまって蜜集めに精を出しています。
ふと、ぶっちーがどうしよう・・・とキョロキョロ探していると、
陽の光を避け、うつむいている悲しげなタンポポに気がつきました。
ぶっちーは地面に降り立ち、
そのタンポポに声をかけようと見上げてビックリ・・・
姿はタンポポ・・・
うーん・・・ちょょっと違う??
タンポポのような黄色ではなく、
なでしこのようなオレンジのようなピンクのような愛らしい色で、
花びらがハートのカタチをしています。

名づけるなら・・なでぽぽ・・・??

ひと夏前にやんちゃなミツバチがタンポポとなでしこの蜜を
一気に集めようと飛び回り、かわいらしい
タンポポとなでしこのハーフ なでぽぽが誕生したようです。

タンポポの仲間にも入れてもらえず、なでしこの仲間にもはいれず・・・
なでぽぽは自分の姿を誰にもみられないようひっそり下を向き、
寂しくて、悲しくて泣いてばかりいました。
「何で泣いているの?こんなに気持ちの良い陽ざしが降り注いでいるのに・・」
「なでぽぽさんが上をむいたら、きっとみんなを優しい気持ちにしてくれると
僕は思う、なでぽぽさんはみんなを幸せにできる力をもっていると思うよ。
みんなにみてもらおうよ!!」
「勇気をだして!なでぽぽさん!!」
「不安だったら、僕がいつも傍にいてあげるから・・大丈夫!!!」

「私??私がなでぽぽ・・・?!」
「うん。そうだよ。」
「名前をつけてくれて、ありがとう、ぶっちーさん」
なでぽぽは嬉しくなり、思い切って顔をあげ、大空にむかって深呼吸してみました。
すると、空を舞うチョウチョや鳥たちが、くさむらで跳び跳ねるバッタ君たちが
いっせいに「なんて優しい色の花なんだろう・・・」と近づいてきて、
なでぽぽに声をかけてきました。
タンポポやなでしこたちも初めはビックリして戸惑っていたけれど、
「なんて陽の光に似合う色なんだろう・・
私たちもなでぽぽに負けないよう一生懸命咲かなきゃ、一緒にがんばろっと!」
と話しかけてきてくれたのです。

なでぽぽは思いました。
怖がってばかりで、自分は下ばかり向いていたけれど、それじぁ、ダメなんだと・・・
生きるって、前に進むことだと・・・ 
ぶっちーの優しさが、なでぽぽに勇気を与えたのです。
思い切って空を見上げてみたら、目に映るいろんなものが輝き始めました。
よし、私を見て、皆が喜んでくれるのなら、精一杯に咲こう・・
そして、たくさんの綿毛を飛ばして、来年は一人ぼっちにならないよう
たくさんのなでぽぽができるよう頑張ろう・・と、なでぽぽは心に決めました。

ぶっちーさん、ありがとう!
なでぽぽが綿毛がなれるよう花弁の中でたくさん
遊んでいってね。そして、私の蜜をたくさんもって帰ってね。
そして何より、できる限り長く私と一緒にいてくださいね。

ぶっちーも蜜を集めるという自分の役目に誇りをもって一生懸命働いていたけれど、
ほんとは、自分もなでぽぽと同じように、仲間のミツバチたちから、
「のろま、のろま」とからかわれ、いじめられ
友達って何だろう、仲間って何だろう・・・と頑張る力をなくしていたのです。
そんな時になでぽぽと出会い、なでぽぽの頑張ろうとする勇気に心を打たれ、
なでぽぽが大好きになりました。

ぶっちーも蜜を運び終わると巣に戻らず、
なでぽぽのそばで限りある時間をなるべく二人で過ごそうと思いました。
水草の間ではしゃぎすぎて飛び回りすぎて足がつっぱってしまった
バッタのぴんちゃんがあきらめず、リハビリをして飛べた事、 
ミツバチの天敵であるスズメバチたちとの決死の戦いに挑んで、
自分たちの巣を守った仲間たちのことを話しながら・・・
ぶっちーとなでぽぽはお互いに慈しみあい、
思いやりあいながら限りある時間をとても大事に過ごしました。

10

そして、なでぽぽがピンクの花びらから白い綿毛へと変化し、
あちらこちらに飛んでいく日、
ぶっちーの命も、蜜集めの役目を終え、燃え尽きようとしていました。
ぶっちーは自分の役目を終え、力をふりしぼり、なでぽぽのもとに戻りました。
綿毛になったなでぽぽがたくさんの夢を抱えて空へ飛んでいきます。
綿毛のなでぽぽを見送りながら、ぶっちーは目を閉じると、
もう動くことはありませんでした。
「僕はいつも、なでぽぽと一緒だよ・・・・。」
ぶっちーのそんな思いは、なでぽぽの綿毛と共に、風に舞っていきました。

11

このひとつの季節の、なでぽぽとぶっちーの様子を水辺の岩陰で、
そっと見守っていたかっぱのかっちゃん。
かっちゃんは大きな台風で川が氾濫し、おとうさんやおかあさんとはぐれてしまい、
この水辺にたどり着いたのです。
いきなり、一人ぼっちになってしまったかっちゃんも
やはり、なでぽぽやぶっちーと同じように寂しい思いをして、下ばかり向いていました。
そんな時ぶっちーやなでぽぽを見つけて、友達になれそうだな、声をかけようかなと
思いながらも、とうとう二人に声はかけられずにいたのです。
ぶっちーとなでぽぽの様子をただ見守り、耳を傾けながら元気をもらっていたのです。

12

かっちゃんは二人がそれそれに旅立っていくと、笹の葉で舟を作りました。
なでぽぽの綿毛がとんでいって残った花弁とぶっちーをその笹の舟に乗せ、
二人がいつも一緒にいられますように・・・笑い合いながら話ができますように・・
と祈りながら川に流しました。
かっちゃんはその笹の舟が見えなくなるまで見送り、
今度は僕が頑張る番だと、 お父さん・お母さんを探すことにしたのです。
なでぽぽとぶっちーから勇気をもらい、かっちゃんも前に進むことに決めました。
かっちゃん、頑張れ!
きっと、ぶっちーとなでぽぽが舟の上から応援してくれているはず・・・・・

おわり