5kappafamily’s blog

知人と一緒に童話を作成しています。これから挿絵を入れて絵本にしたいと思います。

サイドストーリー:第5作:天の川とミツバチ

 

むかしからこの村には、

はちみつがわき出る神社がありました。

 

都会からそう離れていないが、

自然がいっぱいの山河に囲まれたこの村には、

年に一度多くの参拝者でにぎわいます。

 

参道わきには、めずらしいミツバチのお地蔵さまが出迎え、

万病にきくといわれるはちみつと、

夜空の光景を眺めにやってくるのです。

 

境内には、「てみずや」の龍の口から透明ではあるが、

金色のさらさらとしたはちみつがわき出ています。

手を洗い、口をすすぎ、ベトベトしたはちみつではなく、

さらさらとして甘い。

 

 

この神社にまつわるお話では、

むかし村を流れる川には大きな魚が住んでいて、

大雨のときはいつも暴れては村を洪水にし、

村人達を悩ませていたそうです。

 

それを天から見ていたミツバチの神様が、

大きな魚を退治し、村人達にはちみつをあたえ、

キズをいやしたと言い伝えられています。

今でもそのはちみつが、神社からわき出ています。

 

わき出ているはちみつは、

ミツバチ達が朝から晩までせっせと集めたはちみつで、

初夏の夜空を流れる天の川へと運んでいます。

参拝者は灯ろうに明りがともるまで待って、

その幻想的な光景をひとめ見ようと毎年楽しみにしています。

 

いっせいに夜空へ飛び立つその光景は、

金色の粉が舞い上がりキラキラとひかり輝いて、

それはそれは見ごたえがあります。

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しかし、今年はその光景が見られないと

参拝者は残念がっています。

 

なぜなら、急にミツバチ達がいなくなったのです。

 

ある地方では、一夜にしてミツバチ達が

いなくなった事があったそうです。

その年は花も咲かず、リンゴやブドウ、ナシなどの果物の

収穫もありません。

 

田畑にまかれた農薬か、

温暖化による天候の不順か、

はたまた見知らぬ土地へ

はちみつ集めのために貸し出されたストレスか、

あちこちに見えない電磁波の影響で

帰る家がわからなくなったのか、

いずれも原因は分かっていません。

 

ミツバチの神様にこらしめられた大きな魚は、

天の川のはちみつがかたまらないように、

たえず泳ぎ回るバツを与えられました。

何年も、何年もひとりぼっちで。

その大きな魚は、うろこが金色、目も金色、しっぽも金色。

すべてが金色のべっこう飴のような魚です。

 

名前は「ホィッシュ」。

 

今年は、天の川へ運ぶミツバチ達がいないので、

はちみつの量が少なく、ホィッシュはなんとか体を横にして

つかっている状態です。

そして我慢しきれず、

苦しさのあまり夜空へ飛び出してしまいました。

 

夜空に並ぶ星座たちは大騒ぎ。

 

こと座やはくちょう座、わし座といった星座達が、

めいわく顔をしています。

 

ホィッシュは、夜空のうら側まで泳いで、2匹の魚達に会いに行きました。

 

うお座の魚達が言いました。

「天の川にぼくらの仲間がいたなんて、そんな色だと気がつかないよ。」

 

何百年ものあいだ、一人ぼっちでさみしかったホィッシュは、

彼らと楽しいおしゃべりの時間をすごす事が出来ました。

 

 

夜空のさわぎを聞きつけたミツバチの神さまは、

ホィッシュがまた悪さをしたのかと思いましたが、

天の川のはちみつの量が少なくなり、

苦しかったから逃げたのだと知りました。

 

そして、大急ぎで天の川にはちみつを運ぶよう、

日本中のミツバチに助けを求めました。

 

夜を待たずに、明るいうちから天の川へ飛び立つその光景は、

無数の金色の虹が空にかかっているようで、

夜空へ飛び立つ光景とはまた違った風情があり、

参拝者は大喜びでした。

 

天の川がはちみつでいっぱいになると、

ミツバチ達は、それぞれの土地へ帰って行きました。

楽しいおしゃべりを終えたホィッシュも、

はちみついっぱいの天の川へ戻って行きました。

 

 

みんなが寝静まったその夜、夜空から金色の粉が、

キラキラと舞い落ちてきました。

それは、急にいなくなった無数のミツバチ達でした。

 

ミツバチ達が急にいなくなったのは、

いつも一人ぼっちでさみしそうなホィッシュのためのたくらみで、

はちみつを運ばずにみんなで天の川へかくれていたそうです。

 

ほんとうの理由を、ミツバチ達から聞いたミツバチの神様は、

たまには天の川から飛び出し、うお座の友達に会いに

行く事をホィッシュにゆるしました。

 

ホィッシュは大変喜んでは、また天の川から飛び出してしまいましたが、

すぐに天の川に戻りました。

 

そうそう、天の川へかくれていたミツバチ達は、

みんなに迷惑をかけたバツとして、日本各地へ出稼ぎに行かされ、

はちみつの収穫を手伝わされたそうです。

そんな事より、ホィッシュがさみしい思いをしないですんだ事が

何よりのミツバチ達でした。

 

おわり